コラム

【不動産】無籍地をご存じですか?所有権の取得方法など

 

1 無籍地とは

皆様は、「無籍地」をご存じでしょうか?

無籍地とは、不動産登記記録(不動産登記簿)が編成されていない土地のことを言います。

 

なぜそのような土地が発生するのでしょうか?

多くは、明治中期の地租改正事業、及び、それに続く土地台帳の編成作業において、所有者が不明だったり、あるいは、徴税価値に乏しい等の理由により、所有者の名前の登録が省略されたことに由来すると言われています。

 

無籍地の面白い点は、登記記録がなくても、「地図に準ずる図面」(いわゆる「公図」)には位置や形状、ときには地番(に相当する番号)まで記載されていることがある点です。

(なお、公図上の地番表示が欠落しているだけで、登記記録は存在するという場合は、広い意味での「脱落地」ではありますが、無籍地ではありません。)

 

 

2 無籍地の所有権は誰にあるか?

百年前の明治期には徴税価値が乏しかった土地も、現在では有益な土地になっていることがあります。

有益な土地ならば、所有者がだれかを明確にしたいところです。

しかし、なにしろ登記簿が存在しないので、いくら登記記録を眺めても、何もわかりません。

 

それでは無籍地の所有権は誰にあるのでしょうか?

 

いくつかのケースが考えられます。

 

① 明治期以来の真の所有者(の子孫である相続人)が存在するケース。

② 里道や水路敷など、明らかに国や地方自治体が所有者と思われるケース。

③ 時効取得や国からの払下げなどにより所有権を取得した私人がいるケース。

 

 

①の、真の所有者の相続人の調査は、通常、至難の業です。

②については、「国有財産台帳」が手掛かりになる場合がありますが、所有者が国なのか、都道府県なのか、市区町村なのかがわからない、ということも多いでしょう。

③は、払い下げならばともかく、時効取得となると、通常は民事訴訟が必要になるでしょう。

 

どうしても無籍地の所有者がわからない場合は、民法により処理されます。

 民法239条(無主物の帰属)

2 所有者のない不動産は、国庫に帰属する。

登記実務でも、無籍地は原則として国有地として取り扱われています(登記研究98号45頁)。

 

 

3 無籍地の所有権の取得・確認の方法と登記手続

無籍地について所有権を有すると主張したい者は、裁判所に対し、所有権確認訴訟等を提起することになります。

上で述べた民法239条2項により、所有者が不明な土地は国庫に帰属すると推定されますので、訴訟の被告は「国」とする必要があります(昭和55.11.25民三第6757号回答)。

自己の所有権主張と相容れない権利(よくあるのは、入会権)を主張する者があるときは、その者も共同被告とする必要があります。

 

勝訴判決が確定すると、所有権の保存登記申請をすることができます(不動産登記法74条1項2号)。

建物でなく、土地の保存登記というのは、なかなかめったにやることではありませんね。

 

具体的な登記手続としては、

まず、そもそも土地の表題登記がありませんので、表題登記を申請します。

そのうえで、所有権保存登記の手続に従うことになります(同法75条、不動産登記規則157条)。

 

以上

 

 

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