コラム

【不動産】農地の売買と民事訴訟 ~その具体的な手続~

 

農地を購入したのに、売主が農業委員会の許可申請や登記手続に協力してくれないとします。

買主は、どうすればよいでしょうか?

 

前提として、農地の売買は農業委員会等の許可を要します(農地法3条・5条)。

この許可は権利移転の効力発生要件であり、許可を得ずにした売買は効力を生じません(3条6項、5条3項)。

 

実務では、売買契約の条項に、たとえば、「農地法の許可があった時に所有権移転する」などと記載することがしばしばあります。この場合、所有権移転の効力は、「許可」という法定条件により発生するわけです。

よって、許可を得る前であっても、「条件付所有権移転の仮登記」は可能です。

 

さて、農地法の許可があった時に所有権が移転する旨の売買契約では、売主は、許可申請手続及び所有権移転登記手続をする法的義務を負います(最判昭49・9・26民集28・6・1214)。

法的義務があるということは、民事訴訟による解決が可能です。

 

買主は、訴状に次のような請求を記載して、管轄裁判所に対し民事訴訟を提起することになります。

 

【請求の趣旨】
1 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の農地について○○農業委員会に対し、農地法3条の規定による所有権移転の許可申請手続きをせよ。
2 被告は、原告に対し、右農業委員会の許可があった時は、右農地につき右許可の日の売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

 

無事に勝訴判決を得ることができれば、その後は、原告(買主)は単独で手続することができるようになります。

まず、農業委員会に許可申請をします(単独で可能です)。

そして、裁判所書記官に許可書を提出すれば、判決書に執行文が付与されます。

そのあとは、執行文を付与された判決正本を法務局に提出すれば、所有権移転登記がなされます。

 

 

 

 

 

 

 

 

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