文責:弁護士多田幸生
前回のコラムの続きです。
9 隣接地についての説明義務
隣接地の状況は、取引の目的物(新築住宅)そのものではない外部的な事情であり、売主がこれを支配できるものではありません。
しかし、初回コラムに書いたとおり、新築住宅の売主は一般に宅建業者であり、重い説明義務を負います。
買主にとっては、隣接地がどのような土地であるかは、今後の日照・通風・観望・騒音等の予測にかかわる非常に重要な要素です。
よって、売主は、隣接地の状況についても、一定の範囲で説明義務を負います。
10 日照・通風についての説明義務
このような観点から、たとえば、隣地が空き地となっており、そこに中高層マンションが建築され、日照・通風等を阻害することを予測できる場合には、そのようなおそれがあることを顧客に告知するべき説明義務があるといえます(東京高判平11.9.8)。
もっとも、隣地所有者が隣地にどのような建物を建てるかは、基本的には隣地所有者の意思に委ねられていますので、売主は、隣地所有者の意向を調査して調査結果を顧客に説明する義務までは負わないと思われます(東京地判昭49.1.25)。
11 眺望
眺望は、日照や通風と比べると、保護される度合いが相対的に低いと言われ、実際、眺望の説明義務を否定する裁判例が多く存在します(例えば東京地判平2.6.26)。
しかし、販売時に眺望をセールスポイントとしていた場合は別論です。青田売りのマンションのセールス時にした眺望についての説明が、建築完成後の状況と異なるときは、説明義務違反となりえます(大阪高判平11.9.17)。
また、売主において、眺望に大きな影響を与えるような建物が隣地に建設されることを知っていたにもかかわらず、これを告げなかったような場合には、眺望に関する説明義務違反となる可能性があるでしょう。
新築住宅の説明義務についてはひとまず今回で終了です。
次回からは、新築住宅に限らず、広く建物全般の説明義務について、お話ししていきます。