文責:弁護士 多田幸生
前回のコラムの続きです。
4 設備に関する説明義務
前回のコラムに書いたとおり、新築住宅の売主は一般に宅建業者であり、重い説明義務を負います。
建物の設備についても、売主は説明義務を負います。
例えば建物の防音設備の性能について、不正確な表示・説明を行った場合、説明義務違反となる可能性があります(福岡地判平3.12.26)。
防火戸についてはどうでしょうか。
この点、防火戸についての説明義務違反を認めた著名な最高裁判決があります(最判平17.9.16)。
しかし、この判決は、実際に建物で火事が発生し、売主の説明不足により防火戸が機能せず、建物が焼損したという事例についての判決でした。
私は、実際に火事が発生しておらず、買主に被害が出ていないような場合には、防火戸についての説明義務違反を問われるようなことは少ないのではないかと考えます。
5 駐車場・駐車設備に関する説明義務
建物に駐車場があるかどうかは、建物を購入するかどうかの判断に際し、重要な判断要素となる場合があります。
よって、売主は、駐車場についても一定の範囲で説明義務を負うと思われます。
もっとも、多くの場合、建物売買契約における説明義務(違反)ではなく、駐車場契約における説明義務(違反)と整理すれば足りる場合がほとんどでしょう。
たとえば、駐車場についての説明義務違反を理由に、建物売買契約自体を解除できるような場面は、非常に限定的ではないかと思われます(東京地判平22.11.12)。