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バリューアップジャパン様HPに、拙稿「社会常識としての独占禁止法53 早期対応しないことの法務リスク ~電力カルテル事件②~」を公開いたしました。
本HPではその概略をアップいたします。
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1 各社の早期対応の違い
電力カルテル事件では、各社の早期対応(自主申告)の違いにより、違反各社の明暗が分かれました。
<電力各社の課徴金の内訳>
中国電力 | 約707億円 |
中部電力(子会社分含む) | 約275億円 |
九州電力 | 約27億円 |
関西電力 | 0円 (リニエンシーにより課徴金免除) |
関西電力は、公取委が調査を開始する前に、最初に、違反行為を公正取引委員会に自主申告(リニエンシー)したために、課徴金を全額免除されました。
日経に拠れば、「リーニエンシーが認められなければ課徴金は関電1社で1000億円を超えた可能性がある」(ママ)とのこと。
九州電力は、調査開始後に公取委に全面協力し、事後ではありますが、自主申告(リニエンシー)を行ったようです。
そのため、課徴金(通知)額は27億円にとどまりました。
中国電力は、調査開始後も自主申告しなかったと報道されています。
別の報道によれば、公取委が調査を開始した時点では、カルテル合意の存在を否認している会社があったようです。これが中国電力のことであれば「カルテルの存在を否認するからには、自主申告はしない。」という経営判断だった可能性があります。
違反行為が多額であったことや、他社と異なり中国電力は卸売業者であると判定されてしまったことも影響し、課徴金の金額は、史上最高額の707億円になってしまいました。
2 早期対応を怠ることのリスク①:顧客からの損害賠償請求
今回の電力カルテルでは、電力各社の顧客(企業や自治体)は、市場価格より高値で電気を購入させられていたわけですから、顧客から損害賠償請求を受ける可能性があります。
自主申告した関西電力も免れることはできません。
3 早期対応を怠ることのリスク②:投資家からの損害賠償請求
違反した電力各社の株価は急落していますので、これにより損失を受けた投資家から損害賠償請求される可能性があります。
もっとも、一般論としては、自主申告により課徴金を免れた会社は、多額の課徴金を課された会社よりも、株価下落の度合いが低く、損害賠償額が低額に収まることが多いと言えます。
4 早期対応を怠ることのリスク③:株主代表訴訟
違反会社の役員(取締役、監査役等)は、株主代表訴訟により、多額の損害賠償請求を受ける可能性があります。
特に、会社が迅速に自主申告していれば課徴金を免れることができたのに、これを怠った(遅れた)がゆえに、課徴金納付命令を受けてしまったという場合には、役員の責任を追及されることが多く、損害賠償請求のリスクが高まります。
5 早期対応を怠ることのリスク④:資金調達への影響
今回の電力カルテル事件では、関西電力は予定していた600億円の社債発行を中止しました。
中部電力も、予定していた総額100億円のグリーンボンド(環境債)の起債を見送りました。
いずれも、カルテルの発覚により社債等の価値が下落する可能性があり、投資家の保護を図り市場の混乱を回避するための措置です。
以上