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バリューアップジャパン様HPに、拙稿「社会常識としての独占禁止法㊲~支店や子会社による談合・カルテル~」を公開いたしました。
本HPではその概略をアップいたします。
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1 談合とは
「談合」は、側近法の禁止行為の一つであり、国や地方公共団体などの公共工事や物品の公共調達に関する入札の際、入札に参加する企業同士が事前に相談して、受注する企業や金額などを決めて、競争をやめてしまうことを言います。
刑事上は「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金」に処されます(独禁法89条)。れっきとした犯罪です。
令和4年に入り、談合事件についての報道が相次いでいます。
<群馬県警備業務談合事件 : 課徴金総額1480万円>
<「ねんきん定期便」印刷談合事件 :課徴金総額17億4000万円>
2 支店や子会社による独禁法違反にどのように対処するか
群馬県警備談合事件では、いずれも全国に名を知られた大企業(東証一部上場)であるA社(業界1位)の子会社と、業界2位のB社の子会社が、談合行為を行っていました。
社内には相応のコンプライアンス体制があったはずなのに、どうして「カルテル」が発生してしまったのでしょうか。
ヒントは「群馬県」の「子会社」です。
A社の子会社は、元は上信越地方の警備会社で、令和3年にA社がM&Aにより子会社化したばかりでした。
B社の子会社は、元は群馬県の警備会社で、平成29年にB社がM&Aにより完全子会社化したばかりでした。
このような大手企業の地方子会社による談合・カルテル事件について、その原因を推測するならば、概ね次のようになるでしょう。
- 買収前の地方子会社の経営者や営業担当者に、独禁法の意識がなかった。
- 買収時の法務デューデリジェンスにおいて、談合が見逃された。
※A社については次項「4」もお読みください。 - 買収後、親会社の法務・コンプラ部門による監督が、地方子会社に届いていなかった。
これを防ぐための方策としては、例えば、
- 地方子会社の社長以下の営業担当者に対し、親会社と同等の研修を課すなどして、独禁法意識を高める努力をする。
- 親会社の法務・コンプラ部門の子会社に対する監督機能を強化する
といったことが必要だったのではないかと思われます。
4 A社が談合をやめていたことについて
A社について、非常に興味深い事実があります。
公取委が公表している決定書によると、実は、A社の上信越方面子会社は,遅くとも令和2年6月23日以降,談合に加わっていないと認定され、排除措置命令と課徴金納付命令を免れているのです。
令和2年6月というのは、A社による子会社化の直前です。
公表されている情報からはこれ以上のことはわかりません。
しかし、もしかしたら、買収時の法務デューデリジェンスにおいて、この談合が発見され、A社から談合をやめるよう指導がなされていたのではないでしょうか?
もしそうだとすれば、A社は非常に素晴らしいリスク管理を行ったと評価できます。
私は、談合やカルテルは、適切な監査により発見可能だと思っています。
M&Aにおいても、適切な監査(法務デューデリジェンス)により、買収先の独禁法違反を未然に発見・防止することが重要です。
以上