コラム

社会常識としての独占禁止法㉖ ~不当廉売~

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バリューアップジャパン様HPに、拙稿「社会常識としての独占禁止法㉖ ~不当廉売~」を公開いたしました。

本HPではその概略をアップいたします。

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1 不当廉売とは

「不当廉売」とは、簡単に言うと、

「事業者は、極端に低い価格で、継続して商品や役務を提供してはならない。」

というルールです。

自由経済の下では、いわゆる価格競争はむしろ推奨されるべきであり、安売りは、本来、禁止されるような行為ではありません。

しかしながら、事業者の中には、価格競争の名のもとに、採算を度外視した低価格によって顧客を獲得し、ライバル事業者(新規参入者など)を市場から追い出そうとする者がしばしばいます(公正競争阻害性)。
そこで、独禁法は、極端に低い価格で継続的に商品を販売する行為を「不当廉売」と呼び、これを禁止しています。

 

2 不当廉売のチェックポイント①:価格が原価割れしていないか?

たとえばバーゲンセールなどの大安売りを行う場合、独禁法の「不当廉売」に当たらないように注意する必要があります。

チェックポイントの第一は、価格です。

おおざっぱに言えば、販売価格が原価割れしている場合、要注意です。

 

 参考:公正取引委員会のガイドライン

 

3 チェックポイント②:廉売行為に継続性があるか?

バーゲンセールでは販売価格が原価割れすることはしばしばあるでしょう。

それでも、ごく短期間のみであれば、「不当廉売」となりません。

私見では、チェックポイント(目安)は「1ヵ月」です。

ただし、1カ月を超えないバーゲンを定期的に何度も繰り返している場合は、やはり「不当廉売」となってしまいますので、要注意です。

 

4 チェックポイント③:廉売行為を行う正当な理由があるか?

正当な理由があれば、廉売行為は「不当廉売」となりません。

以下、「正当な理由」の例を列挙しますので、チェックしてみてください。

  1. (新規参入目的のバーゲンセール
  2. 閉店目的のバーゲンセール
  3. 在庫処理目的のバーゲンセール
  4. 対象商品の価格が著しく低落している場合
  5. 価格決定後に原材料価格が高騰した場合
  6. 生鮮食料品や季節商品の見切り販売
  7. きず物,はんぱ物等の廉売
  8. 重大事故を防止することを目的とする原価割れ販売

 

5 ライバル会社が不当廉売を行っている場合

公正取引委員会への通報を検討することになりますが、この場合、チェックポイント①の「価格が原価割れしていないか」が、特に重要になります。
なぜなら、ここで言う「原価割れ」とは、自社の原価を下回っていることではなく、ライバル会社の原価を下回っていることだからです。
自社の原価や、その他の情報から、ライバル会社の原価を推測する必要があります。
その推測にある程度の確からしさがないと、公正取引委員会を動かすことができないかもしれません。

 

6 小括

「不当廉売」は、悪気なしに誤って犯してしまう場合も多いと思われます。
摘発事例も多く、企業が守るべきビジネスルールとして重要です。
バーゲンセールを行うときは、価格・継続性・正当な理由の3点をチェックするることをお勧めします。

以上

 

 

 

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