コラム

社会常識としての独占禁止法⑱「抱き合わせ販売」~ドラクエ4事件など

文責:弁護士 多田幸生
初出:株式会社バリューアップジャパン様HP (valueup-jp.com)

 

このコラムでは、企業が守るべきビジネスルールとしての重要性を増している独占禁止法について、お話ししています。
今回は「抱き合わせ販売」を取り上げます。

 

抱き合わせ販売とは?

「抱き合わせ販売」は独占禁止法が禁止する行為(不公正な取引方法)の一つです。簡単に言うと、
「事業者が、顧客に対し、ある商品(※)に他の商品を抱き合わせて販売してはならない。」
というルールです。

(※ 「商品」には物だけでなくサービスなどの役務も含まれます。正確な条文は「公正取引委員会『不公正な取引方法』第10項をご覧ください。」)

取引慣習において、たとえば商品Aと商品Bをセットにして販売することは、しばしばあります。
セット販売が直ちに独禁法違反となるわけではありません。
しかし、行き過ぎたセット販売は、顧客の商品選択の自由を奪う結果となり、B商品の他のメーカーの売り上げを減少させる結果となることがあります(公正競争阻害性)。
そこで、独禁法は、不当なセット販売を「抱き合わせ販売」と呼び、これを禁止しています。
抱き合わせ販売は、公正取引委員会による排除措置命令の対象となり、また、裁判所から差止めを受ける可能性があります。

抱き合わせ販売になる基準は?

上にも書きましたが、セット販売はしばしば見かけますし、全てのセット販売が違法なわけではありません。
「不当」なセット販売のみが、抱き合わせ販売として違法になります。

公正取引委員会や裁判所は、「不当」かどうかの判断に当たり、商品Aと商品Bの市場の状況(シェアの大小や順位、有力他社が存在するかどうかなど)や、行為の広がり(反復・継続性など)を重視していると言われます。

有名な具体例を見て、抱き合わせ販売に当たる場合と、当たらない場合を、把握しておきましょう。

 

抱き合わせ販売(違法行為)の具体例 ~ ドラゴンクエストⅣ事件

平成元年頃、ゲームソフトのドラゴンクエストⅣが大流行し、300万台を売り上げるなど、社会現象となっていました。
これに目を付けた卸売業者Hは、ドラゴンクエストⅣを小売業者に販売する際に、売れ残って在庫となっていたゲームソフトを抱き合わせて販売し、売れ残り在庫を一掃することにしました。

小売業者から見れば、不要なゲームソフトを購入させられ、商品を選択する自由を侵害されています。
典型的な「抱き合わせ販売」であり、H社は、公正取引委員会から排除措置命令を受けることとなりました。
非常に有名な事件であり、30年たった今でも、「抱き合わせ販売」の典型例と言えば、この事件が想起されます。

 

抱き合わせ販売に当たらない行為の具体例 ~ 鉄道電子マネー事例

逆に、抱き合わせ販売に当たらない(違法ではない)と判断された有名な例が、「鉄道事業者によるテナント事業者に対する電子マネー契約の義務付け」です。

鉄道会社J社は、駅や駅ビルの新規テナントが電子マネーへの加盟を希望する場合、自社が運営する電子マネー「S」の加盟店契約を義務付けています。
J社の行為は、駅ビルなどの新規テナントから電子マネーの選択の自由を奪っており、また、「S」以外の電子マネーを駅ビルから排除しており、「抱き合わせ販売」に当たるようにも思われます。

そこで、J社は、事前に公正取引委員会に相談し、当該行為が抱き合わせ販売に当たるか否かを質問しました。
公正取引委員会は、J社の行為は抱き合わせ販売に該当しない、と回答しました。

公正取引委員会のHPによれば、その理由は、J社以外にも有力な鉄道会社は複数あり、J社以外の駅や駅ビルで「S」以外の電子マネーを使用することが禁止されておらず、また、J社の駅や駅ビルにおいても「S」以外の電子マネーの併用が許されていたからである、とされています。

 

最後に

「鉄道電子マネー事例」のような限界事例では、抱き合わせ販売に当たるか否かのかの判断は非常に難しく、弁護士でも即答できないことがあります。
しかし、J社の立場からすれば、自社の駅ビルで電子マネー「S」の契約を義務付けできるかできないかは、経営戦略に大きな影響があるでしょうから、実施する前に、白黒はっきりさせておきたいところでしょう。
「悩ましい限界事例では、事前に公正取引委員会に相談するべし。」というのが、抱き合わせ販売の勘どころかもしれません。

以上

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