コラム

社会常識としての独占禁止法⑬ 課徴金の受け方 ~リニア談合事件をヒントに~

文責:弁護士 多田幸生
初出:株式会社バリューアップジャパン様HP (valueup-jp.com)

 

 

昨今、カルテルや入札談合等を理由とする課徴金納付命令のニュースをしばしば耳にします。

 

 参考記事社会常識としての独占禁止法⑫ ~課徴金減免制度の大切さ~

 

課徴金はときに百億円以上もの巨額になることがあります。

その一方で、同じニュースの片隅に「A社はカルテルを事前に申告したため、課徴金納付命令を受けなかった。」などと書かれていたりもします。

 

なぜ課徴金は百億円以上もの巨額になるのでしょうか?また、課徴金納付命令を免れた会社は、どのような事前申告を行っているのでしょうか?

令和2年のリニア談合事件(課徴金総額43億円)をヒントに、お話ししていきたいと思います。

 

課徴金制度とは?

 課徴金とは,カルテル・入札談合等の独禁法違反行為(※)を防止するため、公正取引委員会が違反事業者に対して納付を命じる金銭的不利益です。

対象となる違反行為は、不当な取引制限、私的独占、不公正な取引方法の一部(共同の取引拒絶、差別対価、不当廉売、再販売価格の拘束、優越的地位の濫用)など多岐にわたります。

令和2年のリニア談合事件は、「不当な取引制限」として、課徴金を課されたものです。

 

課徴金の計算方法は?

 独禁法が定める課徴金の計算方法はとても複雑ですが、法務担当者は、必ずしも全てを理解しておく必要はありません。

おおまかに、次のように理解しておけば、課徴金額の予測などは十分に行うことができるでしょう。

①まず違反行為の「実行期間」(10年を超えるときは直近10年に限定。)を確定し、

②その実行期間中の「売上額」の概算金額を仮定し、

③違反会社に適用される「算定率」(後記)を確定し、

④最後に、実行期間中の売上額に算定率を乗じる。

 

課徴金の金額 = ①実行期間 × ②売上額 × ③算定率

 

具体的な算定率は?

 「算定率」は違反行為の類型により異なります。以下は、公正取引委員会HPからの引用です。

( )内は違反事業者及びそのグループ会社が全て中小企業の場合

不当な取引制限 支配型私的独占 排除型私的独占 共同の取引拒絶、
差別対価、不当廉売、
再販売価格の拘束
優越的地位の濫用
10%(4%) 10% 6% 3% 1%

上表の数字は、基本となる算定率です。違反行為を繰り返す企業や、主導的な役割を果たした企業に対しては、基本算定率が1.5倍ないし2倍になることがあります。

例えば、ある製造業者が、年間売上200億円の製品について、5年間のカルテルを認定されてしまった場合、課徴金は100億円となります。

課徴金の金額=200億円×5年間×10%=100億円

課徴金の金額が驚くほど高額になることがあるのは、このような計算方法のためです。

 

リニア談合事件ではどのようになったか?

①違反行為の「実行期間」
リニア談合事件では、遅くとも平成27年2月頃に違反行為が開始され、平成29年12月8日、東京地検特捜部の強制捜査開始により事実上終了したと認定されました。

 

②実行期間中の「売上額」
実行期間中の各社の落札価格が「売上高」となります。リニア談合事件では、期間中に落札があった2社と、落札がなかった別の2社とで、課徴金についての命運が分かれることになりました。

会社名 売上額 ※推定
O組 約300億円
S建設 約120億円
K建設 (落札なし)
T建設 (落札なし)

 

③適用された「算定率」
 不当な取引制限の基本算定率は10%です。
しかしながら、O組とS建設は、過去に違反行為をした「再犯」だったため、算定率が1.5倍され、15%になりました。

 

④課徴金の計算
推定ですが、おおむね、次のような計算がなされたものと思われます。

O組:  ②売上高300億円 × ③算定率15% = 約45億円
S建設: ②売上高120億円 × ③算定率15% = 約18億円

 

課徴金減免制度(リーニエンシー)の適用

 しかしながら、O組とS建設は、公正取引委員会に対し自主的な違反報告を行ったために、上記の課徴金について30%の減額を受けることができました。

45億円の30%は約13億円、18億円の30%は約5億円もの減額に成功したことになります。

 

このように、課徴金減免制度(リーニエンシー)は極めて重要ですので、次回のコラムでは、課徴金減免制度(リーニエンシー)の内容や適用の受け方について、お話ししたいと思います。

 

以上

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