コラム

社会常識としての独占禁止法69 公取委が調査を打ち切るのはどのようなときか

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バリューアップジャパン様HPに、拙稿「社会常識としての独占禁止法69 公取委が調査を打ち切るのはどんなときか」を公開いたしました。

本HPではその概略をアップいたします。

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1 確約手続は時間と労力を要する

 平成30年に導入された確約手続制度とは、会社が公取委に対し自主的な改善計画を「確約」し、公取委から承認(認定)を得ることにより、排除措置命令や課徴金納付命令を免れるという制度です。
会社が公取委から調査を受けた場合の出口戦略として重要な選択肢の一つです。
しかしながら、確約手続は公取委の手続が多少煩雑で、特に「嫌疑の概要通知」と改善計画の「認定」に時間を要します。先例では、調査開始から「認定」まで、1年半程度を要することがあります。

 

<近年の主な確約手続>

 

2 確約手続を経ずに調査が打ち切られる場合がある

 確約手続を経ずに、公取委が調査を打ち切るケースがしばしば存在します。
以下の事例はいずれも、「嫌疑はなかった」と判断されたからではなく、会社が自主的改善を申し出たことによる打ち切りです。
確約手続と同じことを、煩雑な手続なしで実現しているように見えます。要した時間も短かいように見えます。

 

<近年の主な調査打ち切りの例>

 

3 どのような場合に調査が打ち切られるか

 確約手続を経ずに調査を打ち切られた事例には、次のような傾向があることがわかります。

  • 嫌疑が比較的軽微であること
  • 調査に時間を要する事案であること。
  • 会社が調査に全面協力していること。
  • 会社が、被疑行為(制度)をすでにとりやめて(廃止して)いること。
  • 会社がかなり早い段階で自主的な改善を申し出ていること。

優越的地位濫用のケースが多いように見えます。

その理由は、嫌疑が優越的地位濫用の場合、会社の「優越的地位」の認定や、課徴金算定のための売上等の調査に時間を要すことが多いからではないかと思われます。

なお、すべての要素を満たさなくとも、調査を打ち切られることもあります。

4 公取委の調査を受けた会社はどのように対応するべきか

 会社側としては、まずは嫌疑についての迅速な内部調査を行い、嫌疑についてのある程度具体的な結論を出す必要があります。
そのうえで、「調査打ち切り」を目指すのであれば、公取委が確約手続の要否の検討を始める前に、被疑行為を取りやめ、自主的に改善措置を申し出るべきでしょう。
そうして、後は公取委の判断にゆだねることになります。

なお、談合やカルテルなど、嫌疑が非常に重く、確約手続すら望めないような場合には、リニエンシーなど別の出口戦略を模索する必要があることを付言します。

以上

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