コラム

社会常識としての独占禁止法76 価格転嫁指針について 後編:受注者側の視点から

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バリューアップジャパン様HPに、拙稿「社会常識としての独占禁止法76 価格転嫁指針について 後編:受注者(中小企業)側の視点から」を公開いたしました。

本HPではその概略をアップいたします。

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(全2回の後編。前編は以下より。)

 

1 価格交渉指針は価格交渉のHow To本(ハウツー本)である

 価格交渉指針は、物価高に苦しむ受注者(中小企業)が、発注者(大企業)に対し、どのように交渉して値上げを実現していくべきか、という値上げ交渉の方法論が、具体的すぎるほど具体的に、記載されています。
ほとんど「How To本(ハウツー本)」と言っても遜色のない内容です。
非常におもしろいので、いくつかご紹介します。

 

2 How Toその①:交渉材料には「最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率などの公表資料」を使え!

これは、私が勝手に考えたハウツーではありません。
驚くべきことに、価格交渉指針にそのまま書かれているハウツーなのです。

(引用)
「★受注者としての行動②
発注者との価格交渉において使用する労務費の上昇傾向を示す根拠資料としては、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率などの公表資料を用いること。」

なぜこんなハウツーが指針に書かれているのか。その理由は容易に推測できます。
公取委は、受注者(中小企業)が最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率などを用いて値上げ交渉を行ったにもかかわらず、発注者(大企業)がこれを軽んじた場合には、独禁法の優越的地位の濫用として、厳正に対処すると述べました。

「我々公取委がここまで述べたのだから、中小企業の皆さん、最低賃金の上昇率や春闘の数値を用いれば値上げを実現できますよ、ぜひ使いましょうよ。」

ということだと思います。

 

3 How Toその②:値上げ交渉は、発注者の業務の繁忙期を狙え!

 これも、価格交渉指針にそのまま書かれているハウツーです。

(引用)

「★受注者としての行動③

労務費上昇分の価格転嫁の交渉は、(中略)発注者の業務の繁忙期など受注者の交渉力が比較的優位なタイミングなどの機会を活用して行うこと。

一般論として、発注者と受注者の力関係は、前者の方が強くなりがちです。
しかし、発注者の繁忙期であれば、比較的、受注者に有利になりやすいと言えます。
公取委は、中小企業に対し、「発注者の繁忙期はねらい目ですよ、その時期に値上げ交渉を行いましょう。」と教えてくれているわけです。

 

 

4 How Toその③:自社の労務費だけでなく、自社の発注先やその先の取引先の労務費も交渉材料に使うこと!

これも、価格交渉指針に記載されているノウハウです。

(引用)
「★受注者としての行動④
発注者から価格を提示されるのを待たずに受注者側からも希望する価格を発注者に提示すること。発注者に提示する価格の設定においては、自社の労務費だけでなく、自社の発注先やその先の取引先における労務費も考慮すること。

「自社の発注先」の具体例は、「情報サービス業」と「道路貨物運送業」だそうです(これも価格交渉指針に書かれています。)。
情報サービスを利用している場合や、商品の運搬を外注している場合には、情報サービス業や道路貨物運送業の賃上げ状況(「2」で述べた「公表資料」)を、自分の値上げ交渉のために使ってよい、ということです。
大企業(受注者)側は、この資料を軽んじて値上げを拒否すると優越的地位の濫用として処断される可能性があるので、値上げに応じざるを得ないでしょう。

 

5 中小企業のための相談窓口

 価格交渉指針には、中小企業のための相談窓口が記載されていますので、ぜひご活用ください。

相談窓口 相談窓口の例
本府省等 地方事務所等
価格交渉・価格転嫁の相談(好事例の紹介、転嫁の考え方、参考情報の提供など) 国(地方経済産業局)、地方公共団体(産業振興センター等)
価格転嫁サポート窓口(47都道府県に設置しているよろず支援拠点に設置)
下請かけこみ寺
商工会議所・商工会
本指針の記載内容に関する質問 公正取引委員会事務総局経済取引局取引部 企業取引課
独占禁止法上の優越的地位の濫用の考え方についての相談(注14) 公正取引委員会事務総局経済取引局取引部 企業取引課 取引課又は内閣府沖縄総合事務局総務部公正取引課
下請代金法上の買いたたきの考え方についての相談(注15) 公正取引委員会事務総局経済取引局取引部 企業取引課 下請課又は内閣府沖縄総合事務局総務部公正取引課
中小企業庁事業環境部 取引課 経済産業省の地方経済産業局又は内閣府沖縄総合事務局経済産業部

 

以上

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