和解(契約)を締結する際は、税務の観点が必須です。
たとえば、「和解金が消費税の課税仕入に該当するかどうか」という観点は重要です。
和解により支払う和解金(損害賠償金)は、消費税の課税対象にならないことが多いですが、「対価性がある」場合には、消費税の課税対象となります。
具体的には、不動産の明渡しの遅滞により加害者から賃貸人が収受する損害賠償金は、資産との対価性が認められ、課税される可能性があります(消費税基本通達5-2-5)。
また、著作権や特許権など知的財産権の権利侵害を理由とする損害賠償事件の和解において、権利使用の対価を和解金として支払うような場合には、対価性が認められ、課税される可能性があります。
【参考:国税庁HP「No.6113 「対価を得て行われる」の意義」】
労働事件では「和解金が退職所得に該当するかどうか」という観点も重要です。
従業員の退職を条件とする金員の支払いは、退職金(退職所得)として扱われ、総合課税でなく分離課税として税額が計算されます。
しかし、その和解金が実質的に慰謝料の趣旨であれば、損害賠償金なので、退職金(退職所得)として扱われない可能性があります。
こういったことは、和解(契約)を締結する前に、事前に検討しておくべき事柄です。
検討を怠り、漫然と和解契約を締結した場合には、後日、税務署から思わぬ指摘を受けたり、回避できたかもしれない課税リスクを負うことになると言えます。
弁護士は、最低限の税務上の知識を踏まえたうえで、税理士や会計士等と連携し、必要な確認を行ったうえで、和解(契約)に臨むべきでしょう。