コラム

社会常識としての独占禁止法㊸ 公取委はどのような調査を行うか~報告命令等

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バリューアップジャパン様HPに、拙稿「社会常識としての独占禁止法㊸ 公取委はどのような調査を行うか~報告命令等」を公開いたしました。

本HPではその概略をアップいたします。

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<公正取引委員会が行う調査の流れ>

画像出典:公正取引委員会「独占禁止法違反被疑事件の行政調査手続の概要について(事業者等向け説明資料)」

 

1 報告命令とは

 調査の端緒を掴んだ公正取引委員会は、事件関係人又は参考人に対し、「報告命令」を発して、事件調査に必要な情報についての報告や意見を徴します。

一般的には嫌疑がある程度高まった段階で、立入検査や供述聴取と並行して、報告命令が下されます。

報告命令書を受け取った者は、命令書に添付されている書式により、報告書を作成し、提出することになります。

報告書の不提出や虚偽報告には、1年以下の懲役または300万円以下の罰金があります(間接的強制)。

2 任意の報告依頼について

 報告命令と似て異なるものとして、「報告依頼」があります。

前述のとおり、報告命令には間接強制力がありますが、法令上、「事件関係人または参考人」に対してしか発することができません。

そこで、公取委は、事件関係人にも参考人にも該当しない者(第三者)に対しては、「報告依頼」という任意の形式で、報告書の提出を求めることになります。

事件関係人や参考人に対しても、報告命令より穏便な方法として、任意の報告依頼がなされることがあります。

3 報告命令や報告依頼を受けた場合の会社の対応

 自社に非がなくても、取引先に独禁法違反の嫌疑がある場合には、公取委から報告命令や報告依頼を受けることがあります。

例えば、A社が不当廉売(不当な安売り)によりB社を市場から排除しようとしているのではないか、という嫌疑がある場合、公取委は、A社に商品を卸している卸売業者C社に対し、「販売商品の原価はいくらか」といった趣旨の報告命令や報告依頼をしてくることが考えられます。

C社としては、寝耳に水でしょうが、それでも、命令ないし依頼に応じ、必要な範囲で報告書を作成・提出することになります。

任意の報告依頼であれば、たとえば、報告事項が営業上の秘密等に属する場合などは、報告を拒否するという選択肢もあるでしょう。

 

4 異議申立て

 報告命令等の処分に対し不服がある者は、処分を受けた日から1週間以内に、異議の申立てをすることができます(審査規則第22条)。

 

5 行政調査終了後の流れ

 立入検査、供述聴取、報告命令などの行政調査により、独禁法違反の嫌疑がいよいよ固まった場合、公取委は違反会社に対し排除措置命令等の処分をします。

排除措置命令の前手続として、違反被疑会社に対する「意見聴取手続」が実施されます。

 

次回のコラムでは、この意見聴取手続についてご説明します。

 

以上

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