文責:多田幸生
労働基準法が令和2年3月31日に改正され、翌4月1日から施行されました。
(参考)
未払賃金の消滅時効期間を延長する、極めて重要な改正です。
従前、「2年間」とされていた賃金請求権の時効期間が、「5年間」に延長されました(改正労基法115条)。
ただし、実務への影響が大きいため、経過措置として、当分の間は「3年間」とされました(同143条2項)。
改正法が適用されるかどうかは、賃金の支払期日が基準となります。
具体的には、施行日(令和2年4月1日)以降に給与支払日を迎える賃金について、新法の「3年間」が適用されます。
今回の改正は、実務への影響が非常に大きい改正です。
具体的には、いわゆる残業代訴訟(未払い賃金請求訴訟)のスケール感がガラリと変わります。
従前は、未払残業代を「2年間」分しか請求できません。2年以上前の未払残業代は時効消滅しており、請求できなかったらです。
私の体感では、請求金額(訴額)は「200万円~400万円」という比較的少額のものが多かったと思います。
しかし、改正法(の経過措置)により、「2年」が「3年」になりました。
これにより、今後は、残業代訴訟の規模が1.5倍になります。
請求金額(訴額)は「300万円~600万円」となるでしょう。
経過措置が終了すれば、「5年」となります。
すると、残業代訴訟の規模は2.5倍とさらに大きくなります。
請求金額(訴額)は「500万円~1000万円」となるでしょう。
遅延損害金や付加金(一種の罰金)を加えると、1000万円を超える支払いとなる事例が増えることは、容易に想像できます。
中小企業を倒産させるには十分な金額です。
企業の経営者や法務担当者の方々は、これを機に、自社の従業員にサービス残業がないかどうかなどを、点検し直してみるのも良いかもしれません。
なお時効期間の延長に伴い、賃金台帳、出勤簿、タイムカード等の保存期間が5年(経過措置中は3年間)に延長されていることにもご注意ください。