文責:弁護士 多田幸生
前回のコラムの続きです。
3 シロアリ(白あり)についての説明義務
シロアリが木柱・木板などの建物躯体を食い荒らしていることがあります。
ただし、シロアリ被害は内部で徐々に進行するため、外見上必ずしも明らかでないことがしばしばです。
売主が宅建業者の場合、たとえば建物にシロアリ被害があることを疑わせるような特段の事情がある場合には、シロアリ駆除業者に依頼するなどして被害の有無を調査する義務を負うことがあり得ます。
しかし、そのような事情がない場合には、調査義務や説明義務が否定されることが多いと思われます(東京地判平20.6.4)。
なお、建物にシロアリ被害があることは、いわゆる契約不適合責任(瑕疵担保責任)の対象となりうることにも注意が必要です。
4 地盤沈下についての説明義務
建物の売主が宅建業者の場合、地盤沈下についても一定の説明義務を負うと思われます。
もっとも、基本的には「土地」の問題なので、建物の売買において地盤沈下が重要な要素となっているかどうかは、慎重に見極める必要があります。
例えば、不均衡な地盤沈下(不等沈下・不同沈下)は、建物を傾斜させたり損傷させる可能性があるので、重要でしょう。
宅建業者たる売主において、地盤沈下に容易に気づき得たような場合には、説明義務を負うと思われます(東京地判平13.9.26)。
地盤沈下については、いずれ「土地」の説明義務の項で詳しく取り上げます。