コラム

【不動産】建物全般についての説明義務① ~総論・雨漏り

文責:弁護士多田幸生

 

今回から、(新築住宅以外の)建物全般の説明義務について、お話ししていきます。

 

1 総論

新築住宅以外の建物場合、売主は宅建業者とは限りません。

売主が誰かにより、説明義務の重さを次のように分けて考える必要があります。

 

説明義務の重さ 根拠法
宅建業者

宅建業法

宅建業者でない事業者

消費者契約法

非事業者(宅建業者でも事業者でもない者)

民法

 

宅建業者が重い説明義務を負うのは当然です。

宅建業者でなくても、消費者契約法上の事業者に当たる者は、非事業者と比べ、相対的に重い説明義務を負うと考えられます(参考:消費者契約法3条1項2号)。

 

非事業者(宅建業者でも事業者でもない者)は、原則として、説明義務を負わないと言われます(例えば東京高判平20.5.29)が、例外的に説明義務を負うことはあり得ます。

例えば、購入希望者から説明を求められ、かつ、その事項が購入判断に重大な影響を及ぼすと予想されるときは、非事業者であっても一定の説明義務を負い、購入希望者を誤信させるような説明は許されません(大阪高判平16.12.2)。

また、非事業者であっても、購入希望者に不利益となる重要事項を知っていて告知しないようなことが許されないことは、言うまでもありません。

 

2 雨漏りについての説明義務

売主が宅建業者の場合、建物に雨漏り等の隠れた瑕疵がないかを確認・調査する義務があるといえます(東京地判平13.1.29)。

たとえば建物の天井や押入れ上部に雨漏りの跡らしい古いシミがある場合、宅建業者はわずかな注意を払い必要な調査を行えば、雨漏りの事実を容易に発見できるでしょう。それを怠った場合、調査義務ないし説明義務に違反することとなります。

もっとも、この調査義務は、宅建業者に過度な調査を義務付けるものではありません。

中古の住宅の場合、買主は築年に応じた経年劣化があることを想定して購入するのが通常と思われます。

よって、たとえ売主が宅建業者であっても、将来の雨漏りのおそれや可能性について積極的に調査するべき義務までは負わないと思われます(東京地判平19.5.29)。

 

売主が非事業者の場合、「1」で述べた通り、原則として説明義務はありません。

しかし、売主がその建物に長年居住しており、雨漏りがあることを知っていたにもかかわらず、これを告知しなかった場合には、説明義務違反となる可能性が高いと思われます。

 

 

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