文責:弁護士 多田幸生
今日から不動産売買における売主の説明義務(違反)について、ご説明していきます。
まずは「新築住宅」です。
1 新築住宅の売主の説明義務
新築住宅の売主は、一般に、宅建業者です。なぜなら住宅の分譲には宅建業法上の資格制限があるからです。
宅建業者である売主は、民事上、買主に対し一般的な説明義務を負います(東京高判昭57.4.28)。
特に、新築住宅の場合、買主は、宅建業者である売主が提供する専門知識や情報を信用するほかありません。
そこで、新築住宅の売主は、重要な事実について、不正確な表示や説明を行わないという信義則上の義務を負います(京都地判平成12.3.24)。
新築住宅は、完成前に売りに出されることが多いと思われます。いわゆる「青田売り」です。
青田売りの説明義務は重いとされています。
裁判例では、たとえば、「その実物を見聞できたのと同程度にまで説明する義務」があると言われています(大阪高判平11.9.17)。
2 説明方法 ~パンフレット・広告
セールスマンの口頭の説明内容だけでなく、パンフレットや広告なども、不正確な内容が記載されていれば、説明義務違反となりえます。
近時は、パンフレット等に記載されたコンピューターグラフィック(CG)の画像が正確だったかどうかが重要な争点となった例もあります。
モデルルームの展示も、不正確であれば、説明義務違反となりえます。もっとも、買主側の立場からは、モデルルームにどのような展示がなされていたかを、後日、証明できない場合が多いかもしれません。
3 建物の方位・方角についての説明義務
一般に、新築住宅の売買において、建物の方位は非常に重要であり、売主は建物(マンションの区分所有建物を含む)がどの方角を向いているか等について、不正確な表示・説明を行わないよう注意するべき義務を負うと言えます。
例えば、パンフレットの平面図に方位を示す矢印を記載しないことは、方位に関する説明不十分です。パンフレットの他の箇所に、方位を誤解させるような記載があれば、全体として、方位に関する説明義務違反となるでしょう。
例えば、正しくは「南西」を向いている建物について、パンフレットに「南向き」と記載することは、方位に関する説明義務違反となる可能性があります。
方位の説明は、日照(時間)の説明と密接にかかわります。
方位の説明が不正確である場合、必然的に、日照(時間)の説明も不正確となり、この意味でも説明義務違反となる可能性があります。