今回、カスタマーハラスメント防止対策について紹介します。
1 そもそもカスタマーハラスメントって何?
カスタマー・ハラスメントとは、簡単に言うと、顧客等から就業者に対する、著しい迷惑行為であり、就業環境を害するものです。
もう少し詳しく説明すると次の通りです。
顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの
出典:「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11921000/000894063.pdf
2.カスタマーハラスメント対策の必要性
カスタマー・ハラスメントによる従業員への被害は深刻で、健康不良や精神疾患を招き、休職や退職に繋がることもあります。このような深刻な被害が生じることもあり、近年、カスタマ―・ハラスメントが社会問題として急速に認知されるようになりました。
企業へカスタマーハラスメントの防止対策等を定めた改正労働施策総合推進法が2025年6月11日に公布されました。これにより企業にはカスハラ対策方針の策定や従業員教育を進めること等が求められることになります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
3.東京都カスタマーハラスメント防止条例
東京都では、改正労働施策総合推進法に先立って、東京都カスタマーハラスメント防止条例は令和7年4月1日に施行しています。
https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00005328.html
この条例は、カスタマーハラスメントの防止に関し、基本理念を定め、東京都、顧客等、就業者及び事業者の責務を明らかにするもので、カスタマーハラスメントの防止に関する施策の基本的な事項を定めています(同条例1条参照)。
条例11条に基づき、都はカスタマーハラスメントの防止に関する指針を作成しています。詳しく知りたい方は次のリンクを参照ください。
https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/plan/kasuharashishin0612.pdf
そして、東京都カスタマー・ハラスメント防止条例は、事業者の努力義務として次の通り定めおり、東京都の企業には、カスタマー・ハラスメント防止に適切な措置を講じることが既に求められているといえます。
(事業者の責務)
第九条 事業者は、基本理念にのっとり、カスタマー・ハラスメントの防止に主体的かつ積極的に取り組むとともに、都が実施するカスタマー・ハラスメント防止施策に協力するよう努めなければならない。
2 事業者は、その事業に関して就業者がカスタマー・ハラスメントを受けた場合には、速やかに就業者の安全を確保するとともに、当該行為を行った顧客等に対し、その中止の申入れその他の必要かつ適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
3 事業者は、その事業に関して就業者が顧客等としてカスタマー・ハラスメントを行わないように、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
4.カスタマーハラスメント防止対策推進事業
(1)「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」で規定する事業者による措置等を速やかに企業等へ浸透させるため、カスタマーハラスメント防止対策推進事業が始まりました。
https://www.tokyo-cusharaboushi.jp/
同事業は、カスタマーハラスメント対策に関するマニュアルの作成に加え、カスタマーハラスメントを防止するための実践的な取り組み(カスハラ対策のための法律に関連する相談に対応する弁護士と契約等)を実施した都内中小企業(※)等に40万円の奨励金を支給します。
- 常時雇用する従業員が300人以下の企業に限ります
都内中小企業の方は、顧客等の豊かな消費生活、就業者の安全及び健康の確保並びに事業者の安定した事業活動を促進するためにも同事業を利用してみてはいかがでしょうか。
(2)期間
ア.事業実施期間
令和7年6月30日(月)から令和8年3月31日(火)
イ.第1回 申請受付期間
令和7年6月30日(月)から8月8日(金)17時まで
5.東京弁護士会 民事介入暴力被害者救済センター(民暴センター)
東京弁護士会で、カスハラについて法律相談をすることができます。
「民暴」と言えば、昔は暴力団のことでしたが、今日は暴力的な言動を伴うカスタマーハラスメントも、「民暴」に含まれます。
民暴センターの弁護士は、民暴対策のスペシャリストですので、カスハラ対策にも秀でています。当事務所の多田幸生弁護士もこの民暴センターに所属しております。お気軽にご相談ください。(なお、無料相談ではありません。5,500円(税込)/30分。)
ウェブ申込はこちらから。
https://www.toben.or.jp/bengoshi/center/madoguchi/minji.html